白もやっぱり真っ白じゃない⁉︎ 白絵の具の違いを研究しよう♪ 

こんにちは! 皆さんは白い絵の具…と聞いて思い浮かべる色の名前はありますか?

白は白でしょ?

と言われそうですが、実は白も黒と同じように多彩な種類があるんです。

生成り、オフホワイト…
この辺の名称なら、絵を描かない方でも聞いたことがあるかと思います。

アクリル絵の具も油絵の具も、絵の具の世界にはもっと色々な白がありまして、しかもそれぞれに名前が付いてるんですね。

画材メーカーによっては、独自にオリジナルの白絵の具を作っているところもあります。

世間的に見ると、メジャーな白絵の具は5種類あります。

白の種類はざっと5種類
  • ジンクホワイト
  • シルバーホワイト
  • パーマネントホワイト
  • チタニウムホワイト
  • セラミックホワイト

その中で私は『シルバーホワイト』という白絵の具を長年使ってきたんですが…。

そんなこだわりの白と、遂にお別れすることになりそうです。

さらば危険なシルバーホワイト!

かれこれ20年以上の付き合いになるでしょうか。

透き通るような、下の色を邪魔しないような、かといって冷たい印象ではない、独特の白さが好きでした。

奴の名前は『シルバーホワイト』。

他の色と混ぜる時、相手の成分をいちいち確認しなかなゃらならない気難しい絵の具です。

何故って鉛が入っていて有毒だから(;゚Д゚i|!)

特に混色する場合に注意が必要で、硫黄を含む絵の具(ウルトラマリンバーミリオンなど)と混ぜると危険です。

換気もマストです。

「大丈夫だろ!」と調子に乗って窓も開けない室内で使って、ひどい頭痛に襲われて後悔しました…。

さらにこの白を使う時は、黄ばみに対しても注意しなくていけません。

塗った当時はきれいな真っ白に見えますが、数年経つと黄ばんできます。

とくにメディウムを多用して描いた箇所なんか、もう項垂れるぐらいに黄ばみますね。

それを防ぐためにも、作品保護のためのニス塗りは大事ですね…。

また、ブリード現象という、下に塗った赤色が時間の経験と共に滲んで出てくる現象も起きたりします。
クリムソンレーキなどの上に、シルバーホワイトのグレーズなんて完璧に事故物件です。

と、まあ、とにかく気難しい白絵の具です。

それは知っていたんですが。。。
正直、ここまで変わり果てるとは……

右側は描き上げた当時の写真。左側が約9年後の、黄ばんでしまった状態。

ここまで黄ばみが進んでしまったのは白絵の具のせいだけでなく、実は日光浴もさせてあげなくてはいけませんでした。

リンシードオイルを多様に使用したにも関わらず、数年も暗所に閉まっておいたため、黄変がどえらいことになってしまったんです。
(リンシードによる黄ばみは、日光に当ててあげれば救済できることもあります)

リンシードオイルに関しても私の無知っぷりが招いた結果ですが、さらに追い討ちをかけるように、厚塗りした白絵の具の部分の黄変が激しいです。

私が愛用していたシルバーホワイトは、四天王の中では最弱…じゃなくて、白の歴史の中では最古の種類で、原料に鉛が使用されています。

だからこその透明感(おしろい的な)、だからこその柔らかさを誇るんですが、その儚さゆえ、センシティブな絵の具です^^;

前述したように、混色する相手の成分を気にしなくちゃいけなかったりもします。
この大雑把な私がよくも手を出したもんですが、だから今回のような悲劇が起こってしまったんですね。

そんなわけで、約20年ぶりに、白絵の具を浮気します!

こんなにあるよ、白の種類!

ざっくりと白の種類をあげてみます。

・ジンクホワイト

名の知れたやつです。どの色とも仲良くできて、混色してもケンカしません
ただしちょっと剥がれやすい、というか、厚塗りするとパリパリ割れたりします。
個人的な感想ですが、バイクで言ったらYAMAHAっぽい。ゴテゴテした装飾を好まない感じです^

・シルバーホワイト

毒性、黄ばみの危険、ちょっと高価…と、色々ネガティブなことが多いんですが、何故か愛用者も多いです。(鉛中毒なのか?)乾燥がとても早く、透明性も抜群です。
人物画の目のハイライトや、風景画の窓の光に使って感動したことから使用を始めました。
この癖の強さと癖になる中毒性は、DUCATIの匂いしかしません( ̄▽ ̄;)

・パーマネントホワイト

白の世界の日産です。真冬に一発でエンジンかかるホンダのバイクです
混色問題なし。厚塗り問題なし。毒性もないし、みーんなと仲良くできるし、これといった欠点が見つかりません
なのになぜこれを選ばないのか?
それは、「性能のいい国産車があるのになぜベンツに乗るのか?」の禅問答に似ています。

・チタニウムホワイト

日産ときたらトヨタですね。HONDAときたらKawasakiですよね。CBR対Ninjaかな。
パーマネントホワイト同様、ほぼパーフェクトな白絵具です。
原料がチタンであり成分が少し違うだけです。
ただしこいつはパーマネントホワイトよりもカバー力が強いです!
うっかりこいつを使いすぎると、他の色より一段明るめ…どころか、他の色を食ってしまう白さを誇ります。

・セラミックホワイト

文明の力を最大限に利用した、科学制御のニュージェネレーション!
全白絵具のいいとこ取りをした、スーパーサイヤ人ゴッドです。
私はこれを電子パネル制御なBMWと名付けたいと思います。
そもそも昔はこのホワイトは存在しませんでした。
誕生したのは1990年
開発したのは日本が誇る画材メーカー『ホルベイン』。

実はそもそも私は、白絵の具だけはずーっとホルベインを使用してきました。

シルバーホワイトはもちろんのこと、油絵を始めた頃にお世話になったジンクもパーマネントも、ホルベイン社製でした。

他の色絵の具はウィンザー&ニュートンが8割、ルフラン・その他が2割ぐらいです。
それらのメーカーの白絵の具も試したことはあるんですが、気に入らなくてすぐに使わなくなりました。

ホルベインは件の激安画材屋・世界堂でも取り扱っていますし、110mlや132mlという、大容量のチューブも販売しています。

左から順に、132ml、110ml、50mlのホルベインのチューブ。

手に入りやすく、安価で買い続けられるのも、長い付き合いの理由の一つですね。

そんなホルベインにまたお世話になろうと決意しました。

ズバリ、セラミックホワイトに乗り換えます!

と、とりあえず50mlのチューブを買いました!(小心者ゆえ)

これでも思い切って50ml買ったんですよ^^;

一番小さいサイズの20mlで試そうかと思ったんですが、ちょうど描き始めた作品に白を多用するので、20mlだとあっという間になくなってしまいますから…。

まず、わかりやすく白の白さを試してみます。

次に隠蔽力…下の色をどれだけ隠す能力があるか…です。

これは人によって好き嫌いがわかれるところですね。
しっかり下地を隠して真っ白にしたい人もいれば、そこまでやられるとせっかく塗った下の色が見えなくてしょぼーんとする…(私の意見です)という考え方もあります。

今回は、メディウムで溶いたグレーズ版と、ブラシで厚目にしっかり塗った版を試します。

左がシルバーホワイト、右がセラミックホワイトです(以下同)。

この時点で白の違いがハッキリと出ましたね(汗)
まさかこんな初っ端で出るとはちょっと予想外です。

隠蔽力(カバー力)はシルバーホワイトの方が強いです。
そもそもシルバーホワイトの方が絵の具が固いですね。
こってりしているというか。

セラミックホワイトはどちらかというと柔らかめ、アクリル絵の具の感覚によく似た硬さです。

ペインティングナイフで厚塗りした際の隠蔽力は、薄塗りした時ほど違いは感じられません。

しかし筆で掠れるように塗った際の違いは一目瞭然ですね。

1番の違いは白味の『種類』でした

背景に色がある場合に顕著に出ますが、シルバーホワイトとセラミックホワイトの1番の違いは、白味だということがわかりました。

シルバーホワイトは柔らかい、少しだけ黄色味を帯びた白色です。

極端に言うと、オフホワイトに近いでしょうか。
電球で蛍光色と昼光色を比べた時の、より昼光色に近いかんじです。

対するセラミックホワイトは、ハッキリとわかるほど青みが入っています。

ジンクホワイトと同じレベルか、もしかしたらジンクより青みが強いかもしれません。
しかしジンクホワイトよりも練りが柔らかいので、乾いてからのひび割れの心配は少なそうです。

左がシルバーホワイト、右がセラミックホワイト。。

人物画のハイライトには、やはりシルバーホワイトに軍配が上がる

条件が色々とありますが、人物画を描いて、最後にハイライトを乗せたいならシルバーホワイトもありです。

混色ではなくハイライトとしてならいけるんじゃないでしょうか?

混色する段階ではセラミックホワイトを使いたいと思いました。

風景画や抽象画にしても、混色して描き進めている最中はぐいぐい筆が進みますから、その途中でウルトラマリンやクリムソンレーキに気を取られて、危険性云々の情報に邪魔されたくありません。

また、セラミックホワイトは練りが柔らかく、混色のしやすさも実感しました。

単色で使うよりも、混色メインの白絵の具なんじゃないかと感じたほどです。

結論:完璧な白は無いということ

この白絵の具の研究を始める前の理想は、
『この白さえあれば無敵! これだけで描けるもんね』
を目指してたんですが…。

どうやらそうは上手くいかないようです。

書く題材や技法にもよりますが、白の種類は一長一短です。

メインの白を決めて、その白絵の具の長所も短所も含めて付き合っていくこともできます。
(以前の私のシルバーホワイトそうでした)

しかしもしその短所の部分が納得できなくなったら、適材適所で白絵の具をチョイスして、役割分担させることも必要かもしれませんね。

今回の研究で、白絵の具は場合によって使い分けるしかない(面倒くさいけど)ことがよく分かりました。
好みの色絵の具との相性もあります。

『じゃあやっぱりパーマネントホワイトでいいんじゃない?』

……そんな気はします。

セラミックホワイトより安いですしね^^;

気分はまさに、
<世界中の美食を味わって、最後に味噌汁と米に戻ってきた>
感じです。

今回は主にシルバーホワイトとセラミックホワイトの違いを研究しましたが、次回、禁断のセラミックホワイトとパーマネントホワイトの違いも研究したいと思います!

GT-R 対 BMW!
公道最速の覇者はどっちだ!

各メーカーによる絵の具の硬さの違い

実は結構違います。
ホルベインを基準にすると、最上位の硬さがW&N(ウィンザー&ニュートン)。
逆に一番柔らかいのがルフラン。(私調べ・私感触ですが)
特にW&Nの白絵の具は、「モデリングペーストか!?」ってくらい硬いです。
個人的にこのW&Nの色絵の具が好きで使用していますが、本文中にもある通り、白だけはホルベインです。

硬すぎる絵の具を使う場合、筆運びをしやすくするためメディウムを使いますが、これがまた小難しい…。
テレピンやリンシードや、え、ポピー? 芳香剤? みたいな、名前から用途を想像できないものが盛りだくさんです。

ちなみにこれらの『用途を想像できない難しいメディウム類』ですが、一切使わなくても油絵は描けますから!

グレーズ(水彩絵の具のように水っぽくする)の時だけ、水で薄める訳にもいかないのでテレピンやホワイトスピリットを使用しますけど、もし下書きでも上書きでもグレーズなんてしないよ。って方は、面倒臭いならメディウムやオイルなんて使わなくてもいいんです。

もちろんそれらを使わないことの弊害はありますが、どれを使っていいか解らなくて、だから油絵が好きじゃない…ってなるよりずっとマシだと思います。

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