
今日はニューヨークのギャラリーで展覧会をやることになったお話です。
就職したデザイン会社の社長さんがそもそもアーティストさんでした。
ちょっと変わった技術で作品を作る方なんですけど、「世界に出てみたい!」という野望を持ってました。
で、私はそのお手伝いをさせていただきつつ、ちゃっかり自分も流れに乗って、別のギャラリーで展覧会を開催させてもらったという訳ですね。
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始めにやったのは、もちろんリサーチ。
社長の希望がニューヨークと言うこともあり、まず東海岸のギャラリー調べました。
今も昔も、ニューヨークには星の数ほどギャラリーがあると言われているんですが、確かに半端ない数のギャラリーが存在します。
企業がスポンサーとなっている巨大ギャラリーから、家族経営に近いような個人ギャラリーまで。
多分この「探す」っていう作業だけで2〜3ヶ月ぐらいかかったような記憶があります。
理想はギャラリーが全部お金を出して、作品輸送まで面倒を見てくれる事なんですが、もちろん無名の日本の作家にそこまでやってくれるギャラリーは存在しません。
まずリサーチで見つけたギャラリーにメールを送りまくります。
「そちらで展覧会をやりたいんですが、どうしたらいいですか?」
「こういう作品を作っています。展覧会をやりたいので手伝ってください」
こんなふうに自分のやりたいことを伝えていったんですね。
とろこがこれが全然だめ。
返事が来ても、金儲けのメールしかきませんでした。
「プロデュースをしてやるから100万よこせ」
主にそんな返事が多かったです(笑)
『どうしたらいいですか?』は通じないアメリカ
多分そもそもやり方が間違ってたんですね。聞き方というか。
「自分はこういう良い作品を作っていて、あなたにも得があるから一緒にやりましょう!」
もしくは「日本でこんな良い作品を作っています。ぜひそちらでも紹介してみませんか?」
こういった文章のメールを出し始めました。
これには10数件のギャラリーが返事をくれました。
更にそのギャラリーを1つずつウェブサイトで逆引きして、どこにあるのか? 信用できるのか? 利用者の口コミはどうか? その辺をまたリサーチしていくわけです。
この時点で私は社長さんのマネジメント業をしている感じなので、最終決断は社長に任せつつ、一件のギャラリーを選びました。
マンハッタン・チェルシー地区にあるAgora Gallery。
こちらは商業ギャラリーというか、アーティストから売り盛り込まれた作品のプロモーション業をやっているギャラリーです。
最初にポートフォリオを提出して、向こうの審査に受かったアーティストはプロモーションを受けられます。
で、このプロモーション業の値段なんですが、ピンキリというか、まぁいろいろ値段設定がありまして。
ぶっちゃけて言うと向こうも商売なので、宣伝してやるからそれ相応のお金をよこせと言う事ですね。
その宣伝の種類や規模によって契約金が変わってくると言う感じでしょうか。
社長が契約した内容は、グループ展の開催とダイレクトメールの送付、その他オープニングセレモニーの開催や作品が売れた際の交渉…がセットになっている契約でした。
しめて30万円!(当時の価格)
日本でも一緒だと思いますが、アーティスト個人が主催の個展と、ギャラリー主催の展覧会では大きく違います。
ギャラリーは顧客リストを持っていますので、投資家や愛好家など、商品を買ったことのある人、または見込みのある人などに直接声をかけてアーティストを紹介します。
そしてもし作品が売れれば、前述の契約料とは別に、売れた金額の50〜60%を手数料して徴収するんですね…。
画商丸儲け(T▽︎T)
いや、ニューヨークの一等地にギャラリーを構えるだけで相当な家賃でしょうから、プロデュース料だけじゃ食っていけないでしょうしね(汗)
そもそも売れるかどうかわからない作家の作品をプロデュースして方々に宣伝する訳ですから、人件費を考えても妥当なんでしょうかねぇ?
高いけど…。
とにかく、ギャラリーの方から頭を下げてでも『うちで展示してくれ!』なんて言われる作家は、もうその時点でかなり売れている人ですね。

英語によるステートメント作成!
ここで出会う訳です。ステートメントと。しかも英語…。
よく〈アーティスト声明文〉と訳されますが、要は自己アピール文です。
- どうしてこういう作風になったか
- 何故その手法なのか
- 何を表現し、訴えているのか
この辺が重要視されますが、アメリカ相手だったら、更にここに『社会性』も追加できるとベリーグッドです。
要は
「私の作品は社会にこういう影響を及ぼすものだ。そして(人を)世界をより良くしていると自負するものである」
を語れということですね。
まずもって「いやいや〜私なんかまだまだですよ〜」なんて、口が裂けても言ってはなりません。
馬鹿にされて終わりです。
本気でそう思っている作家はいない筈です。
そしてこの時の英語のステートメント、悔しながら翻訳業者にやってもらいました。
当時の私の英語力では、文章だけで相手を納得させることは出来なかったんです。(しかし出来上がってきた文章、あまりよくありませんでしたよ。作家にしかわからない表現は、例え日本人でも伝わらなかったみたいです。)
バカ高い、美術品の輸送代
ようやくステートメントもギャラリーからお許しが出て(何度もダメ出しされました)、さあ作品を送るぜ〜! って段階まで漕ぎ着けました。
船便? 無理無理、間に合わない。
航空便? 確か郵便局のEMSがあった筈〜♪
んがっ! 激高っ!
で、利用したのはクロネコさんの美術品輸送でした。
同社は公募展の搬入・搬出代行業もやっているので、美術品の梱包や輸送には強いイメージがあります。
…が、やはり値段は国内の宅急便のようにはいきません。
輸送途中の万が一のことも考えて、別途保険にも入りました。
確か、作品2つで15万円ぐらいの輸送費でしたね。
片道です(汗)
作品が売れなかった場合の戻りの輸送費はギャラリー持ちでした(当時の情報です)。
後から知ったことなんですが、アメリカから日本への配送、UPSだと激安なんですね。
税関を通すためのインボイスもしっかり書きました。
中身が何か、いくらぐらいなのか、その辺を細かく聞かれます。
いよいよ開催、企画展!
ギャラリーから「作品が届いたよ〜」の連絡も来てひと安心。
実際に展示されている写真がメールで届いたり、作品タイトルの最終確認をしたり、開催直前までバタバタしていました。
そして無事にオープニングを迎えます。
この時の企画展の会期はは2週間ぐらいでした。
社長は現地のオープニングパーティーには参加しませんでしたが、ギャラリーから提出されたレポートを読んで、その時の様子を想像していました。
訪れた方たちの感想や、値段の交渉の行方、今後のフォローアップについてのレポートが届くんですね。
そしてギャラリーのマネージメント業が妥当だと思ったら、契約期間を延長して追加料金を払う仕組みです。
やっぱり納得できない…となったら契約終了です。
日本の企画ギャラリーと似ているところもありますが、ステートメントの作成など、作家サイドが色々やる…というてんではアメリカの方が大変かもしれません。
ただしアメリカの場合は、どちらの力関係も等しいビジネスなので、プロ対プロの意識が強い印象でした。
以上、今回は社長の作品がニューヨークへ旅立つまでをお届けしました。
次は…輸送費をケチって自ら作品を持ち込んだ私の展覧会のお話です^^;
額縁にガラスは、メジャーじゃない?
日本のデパートが画廊で売っている作品、たいてい額縁にガラス…ってセットじゃないですか?
アメリカのギャラリーに飾ってある絵を見てびっくりしたんですが、ガラスなんて殆ど見かけないんです。
なんなら額縁自体も少ないです。
この現象は主にモダンアートの作品に多かったです。
MoMa(現代美術館)でもほぼガラス無し。
逆にリプロダクションと呼ばれる、複製画のプリント作品には額とアクリル板がついてました。