
抽象画ばかり描いている訳でもないんですが、よく人にこう聞かれることがあります^^;
「デッサンやってなくても抽象画は描けますか?」
「人物を描くのが下手だから抽象画に転向しようと思います」
「抽象画っていいですよね。画力無いの誤魔化せるから」
……どう控えめに答えても、答えは全部「NO!」です!
しかしだからといって、嫌いな絵を描くことはありません。
描き始めて嫌だったら、やめてもいいんです。
やめてもいいんだから、構えてやることはありません。
『デッサンだけどしっかりやらなきゃ』
なんて考える必要はないですよ。
(美大を受験するなら話は別ですが)
私は木や花を描くのが苦手で、たまにどうしても構図的に「ここに木があった方がいいなぁ…」と木を描こうとするんですが…。
普段描かないもんだから、まあ、下手くそなんです。
それでようやく「よし、木を描く練習をしよう!」と木のスケッチを始める訳ですが…。
すぐ飽きてやめてしまいます^^;
それでも、飽きて途中でやめてしまっても、木を描く勉強にはなってますね。
後日また違う木を描こうとしたとき、前回の(少ないけど)経験値が役に立って、最初に描いた木よりは少しずつマシになっていきますから♪
自分にとっても耳の痛い話ですが、絵を描いていると、いずれかのタイミングで『デッサン』と向き合うことになる筈です。
過去の絵より、より良い絵を描きたいと思ったら、必ず成長するタイミングが訪れますから…。
Contents
デッサンは成長していく。走るためにはまず歩こう!
走るどころか、そもそも立ち上がらないと歩くことはできません。
足が無いと、その立ち上がるって動作も出来ません。
足が鉛筆で、歩く動作が絵を描くことだと思ってください。
鉛筆を持って絵を描き始めるのは、赤ちゃんがつかまり立ちからヨチヨチ歩き始めるのと一緒です。
歩いたらバランスを取る練習をして、歩ける距離が延びて、次第に早く歩けるようになります。
絵も一緒です。
いっぱい描いて、描けなくてコケて、泣いて、また描いて。
いつしか自分の描きやすいバランスを覚え、そうしてまた歩く練習をします。
子供が成長と共に走れるようになるのと同じ、絵描きも続けていくうちに成長して、デッサン力が付いてきます。
何回も同じような構図を描いたりしてるうちに、要領も良くなって描くスピードも早くなったりします。
ちゃんと歩けて、走れて、それからようやく靴選びですね。
具象画を描くか抽象画を描くかは、ニューバランスの靴を履くのかナイキの靴を履くのか、それぐらいの違いにしか感じません。
その日の気分で変えることもあれば、人によって履きやすい靴が違うように、描きやすい絵も人それぞれ…ということです。
毎日リンゴやコップやダビデ像は描かなくてもいい
いや、描ける環境と時間があるなら描いたほうがいいですけど。
美大受験のための予備校とか、毎日ひたすら石膏像を描いて練習しますよね。
個人的にはむしろ出来るならあの環境に今こそ身を置きたいです。
趣味で絵を描いている方。
つまり、社会的にそれなりの責任があったり、家族のことをやらなきゃいけない方。
そんな状況で、毎日何時間もデッサンやれますか?
毎日絵を描くことすら難しい時もあるのに、さらにデッサンのために1時間も時間の捻出は厳しいと思います。
1週間のうち、曜日を決めてデッサンの練習日にしてもいいですが…
そもそもデッサンが大好きじゃないと続かないでしょう。

『デッサン』ではなく、クロッキーなら気軽にやれます♪
『デッサン』と聞くと、堅苦しく難しい修行のような響きがあります。
しかし『クロッキー』ならどうでしょう?
少しとっつきやすい感じがしませんか?
でもクロッキーだって立派なデッサン力向上のための修行です。
(クロッキーとは、とても素早く短時間で、対象物をスケッチすることをいいます)
さらに、石膏デッサンや静物デッサンと違い、多くの場合クロッキーは制限時間が短めです。
アメリカやヨーロッパの美術系専門学校は、クロッキーだけのクラスがあり、旅行者でもチケットを買えば気軽に参加できたりします♪
Art Students League of New York
<アートスチューデントリーグのスケッチクラス>
上記のスクールは、オンラインでスケッチクラスに参加もできますよ♪
講師はいなく、数分刻みでひたすらモデルを描いていくクラスです。
1回だけ参加のチケットも昔はありました。
ホームページによると、月会費が$15ですって!?(他のクラスに通っているメンバーは$8)
激安じゃないですか!
(日本からオンラインで参加するなら時差の関係で夜中〜明け方になります…^_^;)
モニターの向こう側ではありますが、身近でヌードモデルが見つからない場合は、こういったオンラインスクールを活用するのは手です♪
何をどうやって描けば練習になるのか
私の家…というか作業場は広く無いので、とてもじゃないですが石膏像を据え置きできる場所はありません。
そこで私が行っているのは、ドラマのワンシーンを素早くスケッチするクロッキーです。
時間はだいたい3分〜5分。
ドラマのストーリーを気にしながらササっと描く感じです。

短い時間の中で描かなくてはいけないので、必然的に『見る能力』が向上していきます。
対象物を捉える能力…といいますか、とにかく、短時間でその物の特徴を捉える練習になります。
この能力は具象画だけでなく、抽象画を描く時にももちろん大切です。
頭の中にある、実在しない何かを描くことが多い抽象画ですから、その対象物をしっかり捉えないとボンヤリした誤魔化しの絵になってしまいますからね。
サッと見てサッと描く。
でもやっぱり割合は7:3で。
見る7、描く3です。
クロッキーの場合の7は、その中に「記憶する」が入っています。
ピンタレストも使えます♪
Pinterest には風景や小物などの写真もたくさんあるので、自分の好みのものをクロッキーできます。
〈お気に入り〉フォルダが何種類も作れるので、クロッキー用に保存しておくのもいいです。
また、湯船に浸かりながらピンタレストを流し見して、脳の『アイデアBOX』に栄養を与えてあげるのもおすすめです♪
ネタが枯渇するとアイデアも浮かばなくなりますからね。
いつもだったら興味のない対象物でも、ピンタレストで偶然見て気になり始める…なんてこともあり得ます。
脳は新しい刺激を受けると活発に働いてくれます。
リアルで旅行や冒険には行けなくても、せめて目の保養(脳の保養?)はさせてあげたいものですね。

理想は実際に目の前で見たものを描くクロッキー
もちろん、人物も風景も物も、本当は実物を描くのが一番です。
これが難しいんですが…。
人物のクロッキーの場合、比較的やりやすいのはカフェです。
できれば人が多めで、入れ替わりが早い系のカフェ。
そういった場所で素早くクロッキーするのも練習になります。
更に、外人さんがいるようなカフェなら尚のこと良いですね。
別にわざわざ外人さんを描かなくてもいいんですが、もしクロッキーをしていることが本人にバレても、外人はむしろ喜んでくれる確率が高いので。
日本人は嫌がることが多いです。
まあ、盗み見されてる…と思われてもしかたないので(汗)

日本では路上でクロッキーをしている人をあまり見かけませんが、海外ではわりと普通に見かけます。
露天のように自分の作品を売りながらスケッチしている人もいれば、単純に道行く人々を描いている普通のおじちゃんなんかも存在します。
しかも描いた人が、描かれた人に「これ、あなたを描いたんだ。貰ってよ」って渡したりしていました。
文化の違いですね〜^^;
まとめ:何故デッサンが必要なのか?
描きたい世界をより良く描くためです。
もし人物の絵を描こうとして、「あれ、この部分の手、どうなってるんだろう?」と不思議になったとします。
「ま、いっか。テキトーで」
もしこう思ったのなら、その作品はその後もずーっとテキトーな絵になってしまうでしょう。
もし湖の底にある幻想的なお城を描きたくなったら。
まず湖も城も描けないと描けませんよね。
もし天使の絵を描きたかったら、鳥の羽を描けなかったら背中の羽は描けません。
そして人体の勉強しないと、背中のどの部分にどうやって羽が生えるのか想像できません。
テキトーにやるとしっぺ返しが来るのです
手の部分が曖昧な絵は繊細さに欠け、建築物がいい加減だと途端に嘘くさく見え、そして背中を描けないから、いつも似たようなアングルでしか天使の絵が描けなくなってしまうのです。
デッサンは誰のためでもなく、自分の描きたい世界のため、自分が納得できる作品のためにやるということです。

と、カッコよく言い切りたいもんですが。
実際のところは、「ここ描けない! 悔しい! どうなってんの⁉︎」ってイライラして、ムキャー!って叫びながらジタバタやる作業のことですね。
描きたいものしか描かないでいると、自分で描き出せる世界はとても狭くなってしまいます。
是非皆さま、共にジタバタして画力を向上させて参りましょう♪
クロッキーやるならペンがオススメ♪
私は厚目のスケッチブック(小)に、0.5mmのゲルインクペンを使っています(uni-ballのsignoとか)。
ゲルインクにしてるのは、これが一番手の速さに追いついてくれるから。
ボールペンでやっていた時期もあったんですが、クロッキーは急いでやるので、ボールペンだとインクがもったりし過ぎてて、早い動きについて来れない時があります。
「だったら鉛筆はダメ?」と思われるでしょうが、鉛筆は消せるからダメなのです。
消せる安心感からか、迷い線が生じたり、余計な線が増えていきます。
失敗しても途中でやめてもいいので、大胆に、思い切って描いちゃいましょう♪
