抽象画の描き方【下地作り編 その2】

今日は、抽象画の描き方【下地作り編】の、<その2>です。

前回は支持体に紙やアルミホイル・布などを貼って下地を作りました。
今回の下地作りはまた別のやり方で、これはこれで楽しい作業でもあります。
さらに前回のアルミホイルや布にも追加できるやり方ですよ♪

支持体の選び方など、前回の記事についてはこちらをご覧ください。

モデリングペーストを使って、マチエールを作ってみよう!

マチエールとは、絵肌・地肌のことです。
ザラザラした感触…とか、さらっとした触りごごち…とかがマチエールですね。
アクリルジェッソに砂だけを混ぜても作れるのですが、今回はモデリングペーストを使用して、ジェッソよりさらに盛り上げ効果満載なやり方をご紹介します。

用意したものはこちら。
モデリングペースト剤と、おおよそ家にありそうな簡単な素材の数々。

マチエール作りの材料
  • お好みの支持体(ダンボール・キャンバス・ベニヤなど)
  • モデリングペースト剤
  • エアーキャップ(例のプチプチ)
  • サランラップ
  • 筆やペインティングナイフ
  • スプーンやフォークなど、自分がイメージする質感を出すためのもの

この他、布やアルミホイルなどを貼っても可

マチエールを作ることにより、絵に動きや面白さが現れます
そして画面に厚みを持たせることもできます。
抽象画だけでなく、具象画…静物画や風景画・人物画を描くときにももちろん用いることができます。
(実際私は人物画の背景も、マチエールを作ってからデザインしています)
抽象画では特に威力を発揮するもので、そもそもマチエール作りからして画面構成やデザインの作業が始まります。

木炭や鉛筆などで下書きをしてからマチエールを作ることもできますよ。

しかしこの場合に気をつけなければいけないのは、下書きの線に「従ってしまう」ことです。

下書きの線が消えてしまうのを恐れるあまり、線を残して周りや線の内側にだけマチエールを作ろうとしてしまいがちです。
そうするとその絵自体が「塗り絵」になってしまい、せっかくマチエールを作っても、主役の背景にしかなりません。

確かに画面の中での「抜きどころ」は大事です。
ですがあまりにも主役だけが描き込まれた作品は、背景や細部が手抜きに見えてしまうので注意しましょう。
できるだけ画面全体で世界観を表現できるよう、まずは下書きの線を大事にし過ぎないよう、思い切ってやってみましょう!
(マチエールを作ってから線を描き直すことも不可能ではないので)

まずはノーマル、モデリングペーストのみで!

最初はモデリングペースト剤のみでマチエールを作ってみましょう。
これだけでも十分な質感が出ます。

私がよく使用しているのはこちら。
クサカベから発売されている、<ジェッソ/硬練りマチエールタイプ>です。
値札写ってますね。
はい、世界堂で2,100円でした。
文字通り<硬い>練りで、盛り上げ効果を発揮してくれます。

アクリル絵の具のメーカーからも各種出ていますので、もし自分なりのモデリングペーストを探す旅に出たい方は是非とも画材屋さんへ足を運んでみてください♪

どこのメーカーのモデリングペーストも、水を用いず、そのまま使えます。
私は硬練りの厚塗りが好みなので特に水は使いません。
筆さばきを若干良くするための水は大丈夫ですが、混ぜすぎると画面に定着しなくなるのでご注意ください。

さて、塗りましょう!
今回はベニヤの上にマチエールを作ります。

画面に直にモデリングペーストを置いて広げてもOKです。
ペーパーパレットに一旦出して、そこから取って使ってやり方でも全く問題ありません。

モデリングペーストの状態がわかりやすいように、今回はベニヤを茶色(アクリルジェッソのバーントアンバー)で下地塗りしています。
小作品用の10㎝ x 10㎝サイズなので、もっと大きな面を塗りたい時は、モデリングペーストの量を増やして派手にやってください。(周りが汚れますので注意が必要です^^;)

全面に塗り広げてもいいですし、画面の好きな箇所に少しだけ使用しても良いです。
ペインティングナイフで伸ばして、フォークで跡をつけてみました。
気分は左官職人です。
子供の頃の泥んこ遊びや、紙粘土遊びを思い出しますね。楽しいです♪

好きに塗りたくったら、丸1日は完全に乾かしましょう!
厚く塗ればそれだけ乾燥に時間がかかります。
盛り上げた箇所が、指で突いたときに凹んでしまったするのでお気をつけください。
完全に乾くと、カサカサと乾いた触感になります。

エアーキャップやサランラップで模様作りも

マチエール作り=模様作りでもありますので、使えそうな素材はどんどん試してみましょう!

ちょっと厚めにモデリングペーストを塗った上から、サランラップをぐにゃっとやって質感を出すこともできます。

逆に、素材にモデリングペースト塗ってからという方法もあります。
衝撃吸収材のエアーキャップ(通称:プチプチ)を利用して、跡をつけて模様を出す方法です。
この場合は、今回のように下地に色が付いているとより一層効果的ですね。

またはモデリングペースト自体にアクリル絵の具を混ぜることもできますよ。
油絵具は混ぜることはできませんが、アクリル絵の具なら、混ぜてから塗っても問題ありません。
マチエールを作って、乾いてから色を乗せることも、モデリングペーストに直に色絵の具を混ぜてしまうことも、どちらも可能です。

砂も使ってみましょう!

さてお次は異素材を混ぜてしまうやり方です。
個人的にはこの「砂を混ぜる」方法が大好きでして、かれこれ30年近く、砂を混ぜたり画面に振りまいたりしています^^

モデリングペーストに砂を混ぜてから塗る方法ももちろんOKなんですが、そうすると、もし途中で他のやり方(サランラップなど)を施したい箇所が出てきても、そのモデリングペーストはもう使えません。

なので、オススメの方法は「塗ったくってから砂をかける」作戦です。

ここからは私のやり方をご紹介。

まず、一番ベーシックなペインティングナイフや筆で塗っておきます。
乾かないうちに上から砂をかけます。
ちょっと砂を広げたい部分は、指を使って砂を撫でて広げます。

砂が均一に広がらなくても大丈夫です。
むしろムラがあった方が、画面が単調にならずに面白みが出ますから♪

ちなみにこの砂ですが、れっきとした画材でございます。
以前お伝えした通り、公園から砂を採取しようしてニャンコかわんこのウ○チを掘り当てたことがあります。
それ以来、砂は画材屋さんで買っています(笑)

麻紐との相性抜群♪

砂と一緒に『麻紐』を用いると、更にいい地が出来上がりますよ♪
麻紐は100均で売っているものです。
砂のザラザラした質感に、更に麻紐でボサボサ感を加えるイメージでしょうか。
寂れた感じを演出してくれます。

砂は乗せすぎると定着しませんので、もしやり過ぎた場合、乾いてから画面を逆さまにして、余分な砂を落としておきましょう。

お次はこれまた砂と相性のいい素材の登場です。

布を貼った上からモデリングペースト!

布も紙も、立派に画材です。
特に布は、独特の質感を作ってくれる優秀なやつですね。

我が家には古くなった手ぬぐいがたくさんあるので、よくそれを割いて再利用しています。
または100均のガーゼが、目が荒くてオススメです。

布はあらかじめ木工用ボンドなどで画面に貼っておきます。


ベニヤ上でもキャンバス上でも、同じようにボンドで貼り付けることができますよ。
ボンドがしっかり乾いてから、モデリングペーストの作業に入りましょう。

布の上にモデリングペーストを塗るときは、ペインティングナイフでも筆でもOKです。
ただしやはり水分は極力少なめにしてください。
布地が水を吸ってしまいますし、せっかくの質感が浮き上がってこなくなります。

一部分をナイフで盛り上げたり、他は筆を刷毛のように使って、雰囲気のあるマチエールを作ってみましょう。

そして更にこの上から砂も使えます。
主にモデリングペーストと布の境界線に砂を用いると、面白いマチエールが現れてきます。

何種類かご紹介してきましたが、アイデア次第でいくらでも画面を面白くできそうです♪
学生時代の友人は、モデリングペーストにおはじきを埋め込んでいました。
まさに紙粘土のようですね^^

後日、しっかり乾いたあとは、水彩絵の具でもアクリル絵の具でも彩色可能です。
もちろん油絵具も使えます!

【抽象画の描き方】としてご紹介しましたが、下書きを呼び起こしたり線を追加したりして、具象画として仕上げてもいいですね。
私の中で抽象画と具象画の境界線は曖昧なので、たとえ下書きがあっても、途中から違う方向へ進むことも多々あります^^;

抽象画を描いてみたいけど、何から始めれば…


と悩んでいる方がいたら、ぜひマチエール作りから楽しんで初めてみてください♪

そして良さげな素材を見つけたら、こっそり教えてください^^

100均に行く目的が変わってしまった件

今までは消耗品や便利グッズをお安く求めに行っていた100均ショップ。
しかしマチエール作りを覚えてからは、商品への目線が変わってきます。

「これ使えるかな?」
「なんかこれ面白そう♪」
「お、和紙がある。溶かして一緒に塗ってみよう!」

などなど…。
キッチン雑貨ですら、遊び道具に見えてきます^^;

お子様とご一緒に楽しんでみてください…と申すべきところなのでしょうが、いやいや、画材は高いですからね。
子供の遊び道具にされたらたまりません。

大人の皆様、両手を汚して泥んこ遊びを楽しみましょう♪

おすすめの記事