抽象画の描き方【取っ掛かり編】

具象画より気楽に描ける抽象画

息抜きやスランプを抜けるための方法としても、とても有効だと思います。

よく「抽象画は具象画より劣る」とか、
「具象画を描けない奴が抽象画にいく」だとか言われますが、おとといきやがれでございます。ピカソを見てからもっぺん言ってみろ、ですね。

確かに具象系をやり込んだ先にある抽象系はまた違う持ち味があります。
それはそれで楽しいので、抽象画に飽きたら具象画に遊びに行ってもいいし、別にスーパーリアルに描けなくても、そんなの写真がやってくれますから心配要りません。

ラクガキだと思って気軽にやりましょう!

さてそんな抽象画ですが、

「これは具象画? 抽象画?」とか、
「これは抽象画としての理論に反する」とか、

そんなあれこれな定義を踏まえず、とりあえず描いてしまった方が手っ取り早いです。

細かく言うと、抽象画には抽象画の歴史やコンテクストがあり、時代背景や派閥や政治的なあれこれも絡んでくるらしいのですが、そんなこと放っておきましょう。

描き上がった絵がどのジャンルであり、どこに属するとか、そんなことは後世の歴史家に任せればよろしいですよ。(田中○樹風)

<「これは何の絵ですか?」の問いに、答えられますか?>でお伝えしたように、もし展覧会を開くとなれば、抽象画を言葉で説明していく必要性も出てきますが、それは後からでも全くかまいません。
(たまに先に思いが湧いて出ることもありますので、そんな時は必ずメモしておきましょう。役に立ちます)




抽象画を描きたくなる時とは?

大雑把に分かるとしたら、以下のような時に抽象画に取っ掛かります。

  • ①手っ取り早く感情を吐き出したい時
  • ②形は見えないけど、色だけは認識できる時
  • ③具象画に疲れて、何描いていいかわからなくなった時



①はわかりやすいですね。

楽しいよりも怒りや悲しみの方が強く現れることが多いです。
とりあえずスケッチブックかキャンバスかパネルに、余っている絵の具でもクレヨンでもマジックでも、感情のままに描き殴ります。
それをそのまま放っておいて、後日、ちょっと冷静になった時に見直すと面白いですよ。
10枚に1枚くらい、思っても見なかった新しい自分の何かが見えたりします。

そのままでもいいのですが、今度はその、描き殴った色や線や面を、今の感情で話しかけるように包んであげるのも楽しいです。

私がよくやる手段として、つまらない色合いしか出せなかった色の画面に、後日蛍光マーカーとか原色のマジックで追加ラクガキします。

さらに余っているマニキュアでキラキラ要素を出したり、それも面白くなくなったらコーヒー溢したりします(部屋が汚れるので注意してくださいw)。

もちろん失敗…というか、全然良くならなくてイライラする時もたくさんありますよ。

これもまた、5~10枚ぐらいに1枚、なんとなくいいのが出来上がります。


季節や環境の変化を色で表す

②にあたるやり方です。

寒い冬の中休み的なほわっとした暖かい日や、真夏日が続いた後の涼しい風が抜けた日。
春夏秋冬にそれぞれイメージカラーがあるように、どうやら人間は本能的に肌で受け取った情報を色に置き換えることができるようです。

そんな何かの色を受け取った時に、それを表現するために色味だけで画面を埋めてしまうのもひとつのやり方です。


その他には、好きな色だけ塗る
もしくは嫌いな色だけ塗ってみる
こんな方法もあります。


好きな色だけ塗ったら楽しいかもしれないし、嫌いな色だけ塗り続けたら、嫌いな筈なのに新しい発見があって面白くなってきたり…。
そんな化学反応が起きたりします。


または、こんなやり方もありますよ。

聞き慣れない音を聞いた
美味しそうな匂いがした
こんな時にも色が浮かぶことがあります。


家族がテレビを点けたら緑色が浮かんだり、シャワーを出しっぱなしにすると藤色みたいな紫が見えたり、連想ゲームのような感じですね。

①のように感情を乗せなくても、単に余った色を思いつくまま塗るだけの時もありますよ。
これもまた、後日そこから世界が広がることがあるので楽しいです。




ヤケクソで投げやりで、途方に暮れた時の抽象画

実はたまにあります。
私にとって、③の「具象画をやり過ぎて何描いていいかわからなくなった時」が正にそれでした。

スランプとも似てますが、微妙に違います。

頭の中に「具象画のネタ」という引き出しがあったとして、それが空っぽになってしまった時でした。
普段はそのネタの引き出しを補充してやるなり、新しい萌えを見つけたら勝手に埋まったりするもんですが、その時は何かが抜け落ちるようにストンっ、と「描きたくなくなりました」。

「描けなくなった」
んじゃなく、描く意欲が無くなったんですね。具象画を。


でもどうしていいかわからずに、とにかくそれまで通りにネタを捻り出し、ラフを切って、下絵を描いて、どうにかして形を作ろうと色を塗って…納得のいかない絵を描き続けていたんですが…。


そんな時、通っていたアートスクールの先生に言われました。

キャンバスを指差して、

「それ、その絵、もう完成してるじゃない」

と。



その時、画面には憂鬱な紫色や水色と、不機嫌なグレーっぽい青色がウネウネしてました。
そのキャンバスを手にした先生は、勢いよく天地を逆さまにしたんですね! グルっと!


そうしてそこにあったのは、雨の日の夕方に、部屋の中から外を眺めたような景色でした。

目から鱗というか、常識という床が抜けたというか。



とにかく、ビックリました(^^;;





息抜きでも、逃げ道でも、良いではないか♪

この出来事があったあと、20年くらい抽象画を描き続けています。
10年ぐらいして具象画もまた描き始めましたが、それまでは仕事のイラスト以外はほぼほぼ描きませんでしたね。


抽象画に出会ったおかげで、今も楽しく絵を描いています。
具象画・抽象画という枠に囚われる必要なんてないんです。



今回は抽象画の描き方【取っ掛かり編】でした。
次は、支持体やコラージュなど、下地で遊んでから描く抽象画のやり方をお届けします( ˊᵕˋ )




【近くにあったけど知らない世界】

見慣れた道を振り返ってみたら、知らない道だった。
的な経験をしたことがあると思います。
ロシアのカンジンスキーも、自分の作品を違う方向から見てハッとなった…と言われています。
最初にコーヒー飲んだ人とか、納豆食べた人とかと、ちょっと似てると思いましたw
住み慣れた自分の部屋も、逆立ちしたらきっと知らない世界でしょうね。

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