世界各地で絵を描きながら滞在しよう! <AIR>アーティスト・イン・レジデンス

こんにちは。放浪癖…はないつもりですが(2回目)、妄想癖が強めのYaskoです。
いつかこのアーティスト・イン・レジデンスを利用して、世界中を旅しながら絵を描いてやるぞという野望に萌えております。

(以外妄想)

朝起きて、淹れたてのコーヒーを飲みつつ、簡単な朝食を友人達と会話しながら済ませる。
南国の光が差し込む、石造りの廊下を通って、中庭を抜けた先にあるアトリエへ…。

決して広くはないが、四方に100号クラスのデカいキャンバスを置けるアトリエは快適だ。
さて、今日はどの作業から取り掛かろうか。

ランチは海を見渡せるテラスで食べよう。
そして夜は、ここに集った各国のアーティスト達と、現代美術のこれからについて語りながら、少しぬるめのテカータビールで乾杯するのだ。

しかし夜更かし過ぎてもダメだ。
明日はオープンスタジオの日で、キュレーターや画廊の担当者が作品を覗きにくる。
いつものように制作しながら、作品のコンセプトを説明しよう。
英語、通じるといいな…スペイン語だったらどうしよう…。

(妄想強制終了)

と、こんな夢のような生活、できるんです。
しかも、場所によっては無料(タダ)で!

アーティスト・イン・レジデンスとは?

すでにご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、アーティスト・イン・レジデンス(以降AIR)とは、世界各地にある、アーティストのための制作環境付き滞在施設です。
ほとんどの場合、同じ建物内・もしくは近場に宿泊施設もあります

政府や自治体がお金を出して援助してくれたり、なんとか基金…みたいな、あしながおじさん団体が助成金で助けてくれたりします。

数年前に、東京・青山の国連大学でAIRの世界会議が開催されました。
それこそ世界中のAIRの担当者が来場し、自分たちのレジデンスの良さをアピールしていました。

そもそもAIRは非営利団体が運営しているものが多いのですが、中には、滞在したアーティストに作品を一つ提供してもらい、それの売り上げでレジデンスを続けていく…という所もあるようです。
家賃…ていうか、ショバ代っていうか、それはそれで一つのやり方のように思います。

以外は、世界のAIRのデータベースを網羅しているサイトです。(英語のみ)

Res Artis(レズアルティス)

情報量がハンパない、AIRの国立図書館的なサイトです。
英語がわからなくても、国を選んで各レジデンスを眺めるだけでも夢が広がります。

AIR_J

日本のAIRを調べたい時はこちら。
実はけっこう身近にレジデンスがあったりして、ビックリしました。
千葉県松戸にあるレジデンスは、元ホテルを改装した施設で、下がパチンコ屋…とか、なんともいえない風情がありますね^^;

AIR自体は、何百…もしかしたら何千?とありますが、私の知る有名どころをちょろっとご紹介したいと思います。

ニューヨークのアーティスト・イン・レジデンス

ISCP

International Studio & Curatorial Programは、ニューヨーク・ブルックリンにある、超ド級に有名なAIRです。
ここで滞在した人の中には日本人もおりますが、やはり皆さま何処からか助成金を受けて…のことが多いようですね。
助成金(グランツ)については後述しますが、ISCP滞在者は、お膝元ニューヨークにあるだけあって、ロックフェラー財団やポロック財団の助成を受けた方が多いようです。

LMCC

Lower Manhattan Cultural Councilは、その名の通り、ニューヨーク・マンハッタンの下の方にあります。
ウォール街まで歩いていける距離です。
こちらのレジデンスは、パフォーマンスやコンテンポラリーアートなど、平面作品以外への支援も行なっています。

ちなみに、上記のレジデンスは無料ではありません。
同施設内に宿泊所もありません。(紹介などはしてくれるそうです)
お金に余裕がある、もしくはなんとか貯金して行ってやろう! という方は、審査に通りさえすれば滞在できます。

……しかしそもそもその「審査」が厳しいんですが。

レジデンス滞在のための『審査』とは⁉︎

各レジデンスによる独自の審査に通らなければ、例えお金があっても滞在させてくれません。
その審査とは、JPEG形式などで保存した作品を送って審査してもらうほか、書類審査もございます。書類審査といっても、出自や学歴を調べるわけではありません。
もちろんレジュメ(履歴書)も提出しますがね。ここでいう書類は、いわゆるプレゼンシートだと思ってください。

主に必要なのは次のことです。

AIRで審査されるもの
  • 志望動機
  • アーティストしての経歴(発表歴、展覧会歴など)
  • 声明文(ステートメント)
  • その筋の専門家からの推薦状
  • 滞在している間の計画表

・志望動機

「私の作風は◯◯で、そちらに滞在して制作することによって、◯◯が良い影響を及ぼし、素晴らしい作品が作れます」
的なアピールです。
どうしてわざわざそのレジデンスを選んだのか、その理由をまとめます。
支援が手厚いから…という理由だけではダメなようですが、立地的に、そこでしか作れない(表現できない)ものがあるというのは強みのようです。
レジデンスの場所(街)の歴史的背景を持ち出したり、自分の作品との繋がりをアピールします。

・アーティストしての経歴(発表歴、展覧会歴など)

CV、Bio、Resume(レジュメ)と呼ばれるものです。
日本でいう履歴書ですが、欧米では見せ方が大分違います。
個展・グループ展などの履歴はもとより、雑誌や新聞に掲載された場合ももちろん載せます。
本来レジュメなら簡潔にまとめるところですが、AIRの審査に提出する場合は、より細かく記載し方が有利だそうです。
たとえば現在本職が他にあり、専門アーティストではない場合。
その職業がアート活動に及ぼした利点なども書きます。
ボランティア活動などもこちらに記載します。

・声明文(ステートメント)

自分の活動を説明するものです。
どんなことを思い、どんな手法で、どんな作品を作っているか。
がメインですが、更にそこに地域・社会との繋がりや、未来への自分の役割なんかを付け加えられると良いようです。
経歴表にボランティア活動を記載した場合、こちらのステートメントでその内容をもう少し詳しく説明するのもありです。
そのボランティア活動を通し、相手や社会にどのような影響を及ぼしたか、また、自分の制作・作品にどのような変化が起きたか、その辺も説明します。

・その筋の専門家からの推薦状(2通の場合もある)

これが中々に厄介ないものでして。
美大を卒業されている方なら、先生に頼めるかもしれません。
しかしそうじゃない、私のように美術系の学歴のない方、もしくはあっても恩師に頼めない方、そんな場合は誰か推薦状を書いてくれる人を探さなくてはなりません。
もし絵画教室に通われている場合は、そこの講師の方にお願いできるかもしれません。
もしくはお勤めになっている会社の上司。…が、快く引き受けてくれれば…ですけどね。
(私は以前に勤めていたデザイン会社の社長さんにお願いしました)
そしてもう一つ厄介なのが、原本の日本語と一緒に、翻訳した書類も必要だということです。
正式書類でブロークン英語はまずいだろうと、さすがにこれは翻訳家にお願いしました。

・滞在している間の計画表

とても重要視される大事な書類です。
「そこに行って何をするのか」
「どんな期間で、何を作るのか」
行ってから考える、ではダメです。たとえ本音がそうだとしても、何かプロジェクトを考え、計画表にまとめます。
平面作品なら、どれくらいのサイズの作品を何点作るのか。
その作品のコンセプトは何なのか。
レジデンスによっては、制作にかかる費用の概算も必要らしいです。。。

例えば有名な山が見える立地のレジデンスなら、毎日その山を描いたり写真に収めるといのも計画の一つです。
そして3ヶ月後にそれをつなげた作品を発表するとか。
ただしその場合、もともとの自分の作風に時間の経過による変化や観察などの趣旨が入っていないと、説得力はなくなってしまいます。

こういったのものの他にも、レジデンスによっては身分証明書としてパスポートのコピーを出せとか、宗教の種類を聞いてくることもあります。

さて、ここからは、もし審査に受かった場合のお金の話です。

助成金についての話

日本にも海外にも、アーティストを支援してくれる機関や財団が多数あります。
個人で奨学金を出してくれるマダムも実在します。
国が支援してくれる場合もあれば、地方自治体が助成金を出してくれる場合もあります。

一般的な流れとしては、上記のAIRの審査が通って、受け入れてもらえることが決定してから、
「私は○○が受け入れてくれるほど才能があります。しかし金銭的な問題があります。なので貴方のところで是非援助してください」
というような申請を行います。

実力を『受け入れ先決定済み』という形で証明するわけです。

ACC(アジアン・カルチュラル・カウンシル)

ここのウェブサイトは日本語ですが、実は本部はニューヨークにあります。
更にここが特別なのは、ISCPやLMCCなどの申請も、ここの審査に通過すればOKなのです。
フェローシップと呼ばれるACC独自の支援プログラムがあって、アーティストは渡航費や生活費も支援してもらえます。
ビザの手配もしてくれます。
また、ニューヨークだけでなく、東京・香港・マニラ・台北にも拠点があります。

文化庁(新進芸術家海外研修制度)

文化庁は海外研修制度だけではなく、国内で行う芸術・創作活動の支援なども行なっています。
またAIRだけでなく、大学への研修や現地イベントへの参加なども含まれます。
歴史も古く、対象となる分野も幅広く、日本在住の20歳以上であれば、応募資格を有します。(一部、高校生対象の支援制度もあり)
帰国した後に報告書を提出する義務はもちろんありますが、支度金や日当まで用意してくれる充実ぶり…。
さすが『文化庁』ですね。

アーツカウンシル東京

東京在住者限定ではありますが、各種助成金の申請を受け付けているようです。
もちろん国内で行う展覧会やイベントへの支援も。
このような地域密着型の支援団体は、各地方自治体にも存在しています。

その他、支援事業を行なっている財団など

ポーラ美術振興財団

野村財団

ポロック財団(英語)

ロックフェラー財団(英語)

今回はアーティスト・イン・レジデンスと、支援団体の一部情報をお届けしました。
AIRだけでなく、お金のかかりそうな創作活動を支援してくれるという意味でも、助成金の情報は知っていて損はないと思います。
こんなご時世ではありますが、アート魂の火が消えないよう、夢と目標はしっかり見据えつつ、健康に留意していきましょう!

※掲載した情報は2021年5月27日現在のものです。
情勢によって内容が変わることがありますので、最新の情報は各サイトよりご確認ください。

アートはやっぱりお金がかかる?

ダミアン・ハーストが作ったダイヤモンドで覆われた頭蓋骨、制作費が約33億円だそうです……。
これ、自腹で作ったんでしょうか!?
それとも資産家たちにプレゼンして、制作費を支援してもらったんでしょうかね?
しかも売れないと思われていたドクロさん、100億円以上で売れたそうです。スゲー…。
企画・計画・遂行までのプロセスが、よほどちゃんとしてないと支援はしてもらえないでしょうが、もし国家予算規模でお金を持っていたら、東京タワーを青か金に塗ってみたいもんです。

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