
抽象画とはなんぞや?
「抽象画って難しい」
「抽象画ってわからない」
「抽象画って誰でも描けそう」
抽象画を描いて発表していると言われるトップ3です。
今日は、上から順番にご説明したいと思います。
ただし、学歴社会の日本において、真逆の立ち位置にいるYaskoが行う説明です。
美術史を知らなくても、画家の名前や国籍がわからなくても、超気軽に読める『抽象画入門』となっております。
美術史に真剣に取り組んでいる方から見たら笑われるでしょうが、自身の経験として、一般人はピカソは知っていてもモンドリアンは知りません。
もし知っていたらその時点でアート好きです。
しかしそのモンドリアンを知らない一般人が、モンドリアンの作品は知っていて、ポストカードをトイレの壁に飾っていたりします。
それは何故か?
モンドリアンのその作品が、好きだからです。
結論ここに行き着く気がしますが、要は好き嫌いでいいんだと思います。
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「抽象画って難しい」
と、思われるのは、当然のこと。
説明書のない、最新の家電を手渡されるようなものですからね。
なんといっても、抽象画の歴史はまだ100年ちょっとしかありません。
その割には作品はたくさんあるんです。
1900年頃に発表されたカンジンスキーやモンドリアンの作品が元だとか、
いやいやそれよりも前、印象派の一部はすでに抽象表現を始めていて、しかし当時の美術界がその流れを認めなかっただとか、
実はアメリカの商業戦略のためで、ポップアートの起源になっただとか…。
色々言われています。
(具象画を見飽きたお金持ちの投資家が、パッと見何を描いてあるのかわからない絵を見て、
「おお! こいつは凄い! これの良さがわかるのは目の肥えた者(俺とか)だけだな!」
と、大仰に持ち上げてビジネスにしようとした経緯もあるようです)
……と、まあ、このような話は、美術史を、興味を持って追っかけなければわかりません。
確かに、美術界の歴史を追えば更に楽しめる絵画がいっぱいあり、もっと言えば、世界史と美術の関係を知れば、「ほほう! だからピカソって凄いって言われてるのか!」と納得することもあるでしょう。
だからこそ「難しい」と言われてしまうんですね。
しかし実は難しくないです。
絵画を見たときの感想として、大まかに次の3つが挙がります。
とりあえず見たまんまの感想で、「好き」か「嫌い」か「よくわかんない」。
抽象画も、これのどれかに入れちゃえばいいんです。
「抽象画ってわからない」
これは、その通りだと思いますよ。
わかりません。
誰もが見たことあるものを、誰もが理解できるように描いたのが具象画ですよね。
具体的に描いてる訳です。
で、
誰も見たことのないものとか世界を、描いた本人にしか理解できない方法で描いたものが抽象画ですからね。
そりゃわかりませんて。
デートで「何食べたい?」と聞かれ、「何でもいいよ♪」と答えたから中華に連れて行ったのに、
『ほんとはピザが食べたかったぁ。ぶう』
とか拗ねられても困ります。
ピザが食べたいならピザって言えばいいし、
何が描いてあるか分かってほしいなら、何が描いてあるか分かるように描けばいいと思うのです。
この記事の最初の方で例えたように、説明書のない、見たこともない機械を「さあ使ってみてくれ」と言われているようなもんです。
電源の入れ方すら分からないのに、「その機械を使った感想を述べて」って言われたって無理ですよね。
だから、抽象画は『わかなくていい』と思います。
かといって、『わからない=嫌い』にならなくてもいいと思います。
好きな香水はありますか?
どんなお酒が好きですか?
私は柑橘系の香りが好きですが、オレンジとレモンとグレープフルーツを全部足しちゃったら、どれがどれぐらい成分に入っているのか分かりません。
ビールも日本酒も洋酒も飲みますが、残念ながらどこのメーカーのなんて銘柄なのか、詳しくは分かりません。
冬場に湯船に浸かるのは好きですが、その日の気分によって、適温が40度なのか41度なのか分からないし測れません。
そんなもんです。
ワインも楽しんでみたいのですが、どれを買っていいのか分からないので、買えません。
だからワインに詳しい友達に相談したり、いっそのこと、ソムリエがいるデパートのワイン売り場に行って、試飲してから買えばいいじゃんと思っています。
もし周りに抽象画に詳しい方がいて、抽象画の歴史や画家の名前などを説明されたら、もしかしたら抽象画が身近になるかもしれません。
もし展覧会で気になる抽象画を見かけて「わからん」と思ったら、もしその場に作者がいたら、ぜひその作品について聞いてみてください。
説明されても分からん時は、その作品との相性がそもそも良くないか、作者本人が作品の意図を伝える力が足りないかです。
抽象画の作家は、抽象的な作品を作っている以上、言葉の力も借りて作品を説明できなきゃならんと私は思っております。
「抽象画って誰でも描けそう」
はぁ…、これ、実は1番よく言われます^^;
よくわからんものを描いて<抽象画>だと言い張れば抽象画になると。
抽象画の定義自体が曖昧ですから、そう言われるとそうなのかな?って…w
いやいや、冷静に考えたらそんなことはないんですよ。
うちのお子様が3歳ぐらいの時に描いたクレヨン画がありますが、よくわからんもの…線? 色? 点? ゴミ? みたいなものが描かれています。
それが抽象画か? と聞かれたら全力で否定しますよ!
それは落書きです!
しかし10歳になり、A4のコピー用紙に描いた戦車の絵はまあまあでした。
デッサンも甘いし、色の面白みもありませんでしたが、まあまあ良き絵でした。
何故か?
それは、紙のどの辺に何を描こうか、ちゃんと構図やバランスを考えて描かれていたからです。
誰が見ても戦車とわかる戦車の絵(具象系)だからではありません。
下のお子様(7歳)は、本人は「猫」と言い張る痩せ細った妖怪の絵を描きました。
100歩譲って、親の欲目で「猫」としましょう。
しかしその猫は、紙の上の方にちょこんと描いてありました。
やはりそれは落書きで、絵の「作品」ではないと思います。
「抽象画は誰でも描けるのか?」
はい。描けると思います。
美術史の背景知らなくても、抽象的表現をした絵は描けます。
しかし「抽象画」と名付けるなら、ちゃんと思想や意思を持って、自分なりの表現をした作品を抽象画と呼びましょう。
落書き、下書き、コーヒーの染み。
これらと抽象画の作品は、全くの別物ですよ。
好きか嫌いかでいいじゃん。
美術の教師や評論家でないなら、好きか嫌いかでいいと思うのです。
赤が好きな人。青が好きな人。
赤も青も好きだけど、黄色はあまり好きじゃない人。
色々います。
絵は好きだけど、怖い絵は苦手。
ルノワールのこの絵は好きだけど、こっちの絵はあまり好きじゃない。
これ何描いてあるかわからないけど、なんかキレイな色だから好きだな…
とか。
そんな風に気軽に、抽象画との距離を少し縮めていただければ、抽象画を描いている者としては幸いに存じます。
もちろんもし抽象画の歴史に興味を持たれたら、ぜひぐいぐいとのめり込んでみてください!
美術界に革命を起こそうとしてきた画家たちの姿が見えてきます。
時に悲しかったり、かっこよかったり、「いやお前それ企画勝ちじゃん?」的なあざとさが垣間見えたりして面白いですよ♪
「これは具象画? それとも抽象画?」
ギリ猫のように見える、丸まった茶色い物体が描かれた絵は具象画なのか?
それとも100人中100人が「猫」と答えなければ具象画とは呼べないのか?
ドラえもんは猫なのか?
具象画と抽象画の線引きは難しいところですが。
例えば、100%の倍率で手のひらを書いたら具象画で、600%まで拡大して同じサイズのキャンバスに全面手のひらを描いたら抽象画…でしょうか。個人的意見ですが。
実は私の作品のうちいくつかは、本人は具象画のつもりで描いているものがあります。
風景画です。
しかしその風景は自分の頭の中にしかないので、誰が見てもわかる風景ではありません。
だから<抽象画>としジャンル分けしておりますが、心の中では「風景画なんですー」と呟いておりますよ。
ただ具体的に道があったり木が生えている訳ではないので、やっぱり具象画ではないんでしょうが。
更にいえば、抽象画にもジャンルがあったりします。
ピカソのキュビズムは具象か抽象か?
いまだに両意見あるようです。ややこしや〜ですね^^;